東京五輪から正式種目の「3人制バスケ」の魅力とは?女子日本代表を目指す根岸夢(前編)

東京五輪から正式種目の「3人制バスケ」の魅力とは?女子日本代表を目指す根岸夢(前編)

2020年に開催される東京オリンピックの正式種目となった「3×3(スリー・バイ・スリー)」。5人チームで行われる一般的なバスケットボールとは異なり、3人チームで行われます。初めてのオリンピック種目化ということで注目が集まっていますが、まだ競技についてご存じないという方は多いでしょう。その魅力や普通のバスケットボールとの違いなどを、全国大会での優勝経験を持ち、3人制バスケットボールチーム「湘南サンズ」に所属する根岸夢(ねぎし・ゆめ)選手に伺いました。

自然な流れで始めたバスケ

 1993年生まれで、現在は25歳の根岸選手。大学時代まで、体育会に所属してバスケットボール競技に取り組んできました。U16アジア選手権2位やインカレ優勝、さらに2015年のユニバーシアード日本代表など、すばらしい経歴を持っています。ここで気になるのが、バスケットボールを始めたキッカケ。話を聞いてみると、やはりスポーツは“周囲からの影響”が大きかったようです。

「家族がみんなバスケットボールをやっていたんです。だから物心ついたときから、ボールを使って遊んでいましたね。自然な流れで、気づいたらバスケットボールを始めていた感じです。でも、最初からそこまで真剣に取り組んでいたわけではありません。小学校1年生からミニバスに入りましたが、そこまで力を入れてはいませんでした」

家族の影響でバスケットボールを始め、ミニバスで競技を始めた根岸選手。しかし本格的に選手としてのめり込むのは、中学校に入学してからのことでした。

「バスケットボールが強いとは知らず、名門の中学校に入学しちゃったんですよ。このとき初めて上京し、寮生活が始まりました。ちょうど全国3連覇を狙っていた年ということもあり、周囲は強い選手ばかり。上下関係も厳しかったですね。1年生の頃は選手としてエントリーにすら入れませんでした。試合に出られるようになったのは2年生から。しかしそういう環境だったからこそ、私自身も力を磨いていけたのだと思っています」

中高一貫校だったため、そのまま高校へ進学。同じくバスケットボール部に所属し、中学・高校を通じて全国大会の舞台を経験したという根岸選手。大学でも4年間、体育会でバスケットボールに取り組みました。

「スポーツ推薦だったこともあり、もちろんバスケットボールは大学でも続けました。本当は留学など、やってみたいことがあったんですけどね。文武両道を掲げる大学で、他部も成績を残すことが当たり前。1年生は試合に出られませんでしたが、その“当たり前”ができていない自分が悔しかったのを覚えています。でも、友達がプロとして頑張っている姿などを見て、考え方を前向きに変え、私なりに全力で取り組みました。その結果、インカレ優勝など貴重な経験ができたのだと思います」

「3×3」には判断力が欠かせない

  大学でも活躍を見せた根岸選手ですが、卒業後は一般企業に就職。バスケットボールはサークルでの活動に留まりました。そんな根岸選手が、なぜ今度は「3×3」という競技で勝負することになったのでしょうか。

「一言で言えば……騙されたんですよ(笑)。2年勤務した企業の退職で、バスケそのものを引退するタイミングでした。先輩から3×3の大会に誘われて、1回だけの記念みたいなつもりで参加したんです。それがいま所属しているチーム。本気のプロチームだなんて、知りませんでしたよ。でも結局、それがキッカケで3×3の魅力を知り、こうしてプレイするようになったんです」

思いがけず「3×3」という競技に出会い、本格的に取り組むことに。“騙された”と言いつつ、その笑顔はとてもイキイキして見えます。続いて実際にプレイしてみて感じた競技の魅力、そして一般的なバスケットボールとの違いなどを伺いました。

「バスケットボールと比べて、3×3は体格の小さな日本人でも勝つ可能性が高い競技だと感じています。速く切り替え、瞬時に判断し、頭をフル回転させることで、体格差は十分にカバーできる。たとえばバスケットボールには、ボールを持ってから24秒以内にシュートを打たなくてはいけない“24秒ルール”が存在します。でもこれ、3×3だと半分の12秒なんですよ。さらに得点が決まったら、間髪入れず相手はプレイをスタートできます。いきなりワンパスでシュート! なんてことも少なくありません。そのため、常に先読みしながら行動する必要があるんです。流れやタイミングを見極め、瞬時に判断してプレイする。これは経験を積まないと難しく、私も競技しながら学んでいるところです」

「3×3」を始めた当初は、根岸選手自身もプレイスタイルに戸惑うことがあったとのこと。だからこそ、バスケットボールとは違った魅力に惹かれているのかもしれません。さらに“見る側”の視点でも、バスケットボールとは異なる点があると教えてくれました。

「コートが近く、選手と同じくらいの目線で試合が見られます。場所も体育館などではなく、たとえばショッピングモール『ららぽーと』などさまざま。DJがいることもあり、より身近に楽しめるスポーツではないでしょうか」

3×3はこれからの競技、だからこそ可能性がある 

さいごに、これから「3×3」を始める方に向けて、メッセージをいただきました。

「男性の場合は、以前からプレミアリーグなどが開催されていました。そのため、チーム数もたくさんあります。一方で女子は今シーズンからリーグが誕生したばかり。チーム数も6つしかなく、試合では総当たり戦です。そのため、日本代表を目指せる可能性は、バスケットボールより高いと思います。くわえて、発展途上の競技だからこそ、一緒に盛り上げていけるという点も魅力ではないでしょうか。すでにでき上がったものに対して受け身に取り組むのではなく、選手が主体となり、ときに周囲を巻き込んで何かを作り上げていける。なかなかできる経験ではないと思います。少なくとも私にとって、そういう環境は大きな魅力ですね」

実際に競技してみて、やはりバスケットボールと「3×3」との親和性は大きいと感じているようです。バスケットボールでの経験を活かし、新たな知識・スキルを上乗せしていくことで成長を目指せると語ります。ご興味のある方は、ぜひ近くのチームなど探してみてはいかがでしょうか。

[プロフィール]
根岸夢(ねぎし・ゆめ)
1993年生まれ、群馬県出身。両親の影響で小学1年生からバスケットボールを始め、大学4年生まで体育会で競技に取り組む。卒業後は一般企業に就職し、バスケットボールはサークルにて活動。先輩からの誘いで2018年3月より「3×3」チームの湘南サンズに所属。2018年4月には全国大会優勝を果たし、現在は東京五輪出場を目指して活動している。

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

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