【海外アスリートレポートvol.1】ドイツのスポーツ事情 reported by 飯高 悠貴(フィールドホッケー)

ドイツでフィールドホッケー選手として活動している飯高 悠貴です。

今回からアスカツ編集部の一員として、主に海外のスポーツやアスリート事情について発信していきたいと考えております。

早速ですが、ドイツ人がどのような環境でどのようにスポーツに取り組んでいるかご存じでしょうか?
日本のような部活か、それともクラブチームでしょうか?
そもそも部活とクラブチームの違いは何でしょうか?
スポーツ人口に違いはあるのでしょうか?

今回は、僕が所属しているチームも例にあげながら、ドイツのスポーツ事情をご紹介したいと思います!

THK Rissenでの練習環境

THK Rissenはドイツ第二の都市、ハンブルクに拠点を置く街クラブです。
Tはテニス、Hはホッケー、Kはクロケット(ゲートボールのような競技)、Rissenは地名と非常にシンプルな名前です。
会員は1000名程度でドイツでは中規模クラブだそうですが、ホッケー場は2面、テニスコートは屋内外合わせて約15面あり、充実しています。

THK Rissenの上空写真

会費も年間5-6万円とそこまで高くありません。
サッカークラブはもっと安く、国民誰もがスポーツに参加できる環境が整っています。

ホッケーはU6チームから成人チームまで、男女それぞれチームがあります。
僕はそのトップチームでプレーしており、ブンデスリーガ2部に所属しています。
トップチームといっても、平日練習は火曜と木曜の週2回、1回2時間。これに加えて週末の試合です。
U18以下のユースチームも同様かそれよりも少ない練習量なので、日本の部活動と比べるとかなり緩く感じられるかもしれません。

しかし十分に休養をとれるため1回1回の練習強度を高めることができるので、こちらの方が上達できると僕は感じています。

 

THK RissenにはU6から成人チームまで、男女合わせて18チームある。

ドイツ人はクラブチーム(フェライン)でスポーツに取り組む

THK Rissenのような街クラブがドイツには90,000以上あり、国民の3分の1にあたる2,763万人(2010)が所属しています。
日本では部活(中高)に335万人、総合型地域スポーツクラブに132万人所属していると言われており、この数と比較するととんでもない規模だというのが分かると思います。

ドイツではこの街クラブを「Verein(フェライン)」と呼びます。
フェラインはドイツ語で「組織」を意味し、スポーツに関連するフェラインは特に「Sportverein(シュポルトフェライン)」とも呼ばれます。

ドイツ人は基本的にはフェラインに所属してスポーツに取り組むので、部活動はほぼありません。

フェラインは老若男女誰でも所属できます。
年をとってもずっと同じクラブに所属できるので、3世代揃って同じクラブにいる風景も珍しくありません。
THK Rissenのヘッドコーチとチームマネジャーはフェラインのことを「第二の家」と言っていました。
スポーツの受け入れられ方が日本とは大きく異なることが分かるのではないでしょうか。

また、学校に紐づかないのでチームの移籍が柔軟に可能で、さらに同一クラブから複数チームがリーグ戦に出場できるので、補欠がおらず誰でも必ず試合に出られる環境が整備されています。

そのため、年齢や競技レベルに応じて自分に合った場所で活躍することができます。
そのためいつまでもスポーツを好きな人が多く、国民の3分の1がクラブチームに所属しているようです。

ドイツのフェラインと日本のスポーツ環境の比較 ※左がドイツ/右が日本。

フェラインには「全世代型」「選手・指導者の移籍が容易(流動性)」「グラウンドへのアクセシビリティ(利用の容易さ)」という特徴があり、これらがドイツ人の3分の1が参加するほどの人気を生み出していると考えています。

ドイツ人の競技人口って日本と比較するとどれぐらい?

それではどれほどドイツにスポーツが根付いているのでしょうか?

日本とドイツ、またホッケー大国オランダの競技人口を合わせて比較してみましょう。

日本・ドイツ・オランダの競技人口比較

表のように、日本とドイツではサッカー、ホッケー共に人口比で約10倍以上の開きがあるのが分かります。

登録者の実数でみても、サッカー、ホッケー共に約8倍近く違うのです。

人口が1728万人と、日本の7分の1しかないオランダでも、サッカー、ホッケー共に日本の登録者を上回っています。

 

ドイツとオランダはサッカー、ホッケー共に日本よりもずっと世界ランキングが高く、これまでの五輪やワールドカップでの実績をみても比較になりません。

その背景には体格や技術、戦術といった面が取り上げられがちですが、まず競技人口の違いにも目を向けるべきではないでしょうか。

703万人対90万人では勝つのは難しいですよね?

「なぜ日本では競技人口がこれほど少ないのか」という視点は日本のスポーツを改善するヒントになるかもしれません。

まとめ

今回はドイツのスポーツ事情をみていきました。

ポイントは3つ。

●ドイツのスポーツ施設は充実していて、練習量は少なめ。

●ドイツでは老若男女が「フェライン」という第二の家でスポーツに取り組んでいる。

●サッカー、ホッケーの競技人口はドイツが圧倒的に多い!

日本とのスポーツ環境の違いに驚かれた方も多いのではないでしょうか?

世界では日本と全く異なる環境でスポーツに取り組んでいます。

さまざまな視点を取り入れることで日本のスポーツを活性化させるヒントが得られるのではないでしょうか。

おわりに

私はホッケー選手として活動しながら、ドイツのフェラインの特徴”全世代型”、”選手と指導者の流動性”、”グラウンドへのアクセシビリティ”をもった「日本型フェライン」実現に向けて、Sports X Leaders Program(https://sportsxinitiative.org/program.html)の仲間と活動をしています。

「日本型フェライン」やドイツのスポーツ事情に興味のある方は飯高までご連絡ください.

また、クラウドファンディングでご支援も受付中です。応援よろしくお願いいたします。

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