
【日本一の監督対談】勝利より人材育成!國學院大學アルティメット部監督が語る指導者論
「日本一になることは目的ではなく手段である」―この言葉を聞いて、どのような印象を受けるでしょうか。勝利至上主義が当たり前のスポーツ界において、このような哲学を持つ指導者は決して多くありません。しかし、この考え方こそが現代のアスリートキャリア形成において極めて重要な視点なのです。
今回は、YouTubeチャンネル「アスリートキャリア」で紹介された、國學院大學アルティメット部監督の指導哲学と人材育成論について詳しく解説していきます。現役アスリートの皆様には競技生活と将来のキャリアを両立させるヒントを、指導者の方々には新しい指導アプローチを、そして企業の皆様にはアスリート採用の新たな視点をお伝えします。この内容は、スポーツを通じた真の人材育成とは何かを考える貴重な機会となるでしょう。
レギュラーになれなかった経験が生んだ指導哲学
國學院大學アルティメット部監督の指導哲学の原点は、意外にも高校時代の挫折体験にありました。福岡県の東福岡高校ラグビー部という強豪チームに所属していたものの、一度も試合に出ることなく3年間を過ごした経験が、現在の指導者としての礎となっているのです。
この挫折を単なる失敗で終わらせることなく、監督は自ら学生コーチのような立場を志願しました。3軍、4軍、5軍の練習を監督と一緒に考え、頑張っている後輩や同級生の様子を監督に伝える役割を担ったのです。この経験により、選手として活躍できなくても、チームに貢献する方法があることを身をもって学びました。
現在の指導において重要視しているのは、練習の成果を正当に評価する仕組みです。走り込みを頑張った選手や練習試合で活躍した選手は、その日のうちに選手登録表のランクが上がる一方で、1軍の選手でも結果が出なければランクが下がることもあります。この透明性の高い評価システムが、選手たちの意欲を掻き立てる重要な要素となっているのです。
企業経営から学んだチームマネジメント手法
監督が特に力を入れているのは、企業で学んだ手法を部活動に取り入れることです。物事を始める前のミーティングでベクトルを合わせることや、ビジネスで使われる「マイルストーン設定」などの考え方を積極的に導入しています。
これらの取り組みの背景には、「部活でいち早く企業風土や体質を取り入れることで、選手たちに社会に慣れてもらう」という明確な目的があります。大学の4年間を「誰かが面倒を見てくれる最後の場」と捉え、社会に出る前の準備期間として最大限活用しているのです。
日常生活におけるマナーや礼儀も重視しており、当たり前の挨拶、ゴミ拾い、身の回りを清潔に保つことなどを徹底させています。これらは一見些細なことに思えますが、社会人としての基礎的な素養を身につける重要な要素となっています。
企業経営手法の導入例 | 具体的な取り組み |
ベクトル合わせ | 練習前のミーティングで目標共有 |
マイルストーン設定 | 段階的な目標設定と評価 |
透明性の高い評価 | 練習成果の即座な反映システム |
基礎的なビジネスマナー | 挨拶、清掃、身だしなみの徹底 |
自主性を育む「考えさせる指導」の実践
監督が最も重要視しているのは、選手たちに「自分で考える力」を身につけさせることです。長年の経験から解決方法を知っていても、それをすぐには提示しません。選手たちに話し合いをさせ、自分たちで出した答えを試させ、うまくいかなければ再度考える機会を与えているのです。
この指導方法の根底には、「社会に出た後に人に任せずに自分で考える人になってほしい」という強い思いがあります。監督が何かを決めて指示するやり方には限界があり、与えられたもので勝っても真の喜びは得られないと考えているからです。
自主性を育てる上で重要な役割を果たすのが上級生、特に4年生です。「あなたたちは見本だよ」と常に言い聞かせ、チームの雰囲気が暗い時には下級生に声を出すよう促すのではなく、4年生に「君が盛り上げろ。そうすれば勝手にチームがついてくる」と伝えています。
アルティメット競技が持つ人材育成の可能性
アルティメットの最大の特徴である「セルフジャッジ(審判がいない)」システムは、人材育成の観点から見ても非常に価値の高い要素です。一見面倒に思えるこのシステムですが、大人になれば話し合いや調整、時には譲歩することが必要な場面が多くあるため、競技を通じてこれらのスキルを学べるのです。
監督は、チームにいた尖ったメンバーも4年生になる頃には「丸くなった」と感じることが多いと語っています。これは競技特性による人間的成長の証拠といえるでしょう。フラットな状態で始められる競技が少ない中で、アルティメットは新たな出会いや挑戦に非常に適した競技なのです。
社会人として必要な「コミュニケーション」や「調整」の場面は、アルティメットに限らずスポーツ全般に多く出てきます。しかし、アルティメットではこれらの要素がより顕著に現れるため、意図的にそういった状況を作り出すことで、選手たちの成長を促進できるのです。
満足度の高いチーム作りと長期的な視点
監督がチームを一言で表すなら「満足度が一番高いチーム」だと語っています。これは結果だけではない、様々な意味での満足度を追求する姿勢を表しています。
この考え方の背景には、「アルティメットをすること以上に、卒業後の40年、50年働くことの方が重要である」という長期的な視点があります。チームにいる間に「立派な社会人」ではなく、「普通の1人前の社会人になれる自信をつけてもらう」ことが裏テーマとして設定されているのです。
その上で、もしチームが1位になれれば「よりかっこいい」というオプションのように考えているという表現は、勝利至上主義に陥りがちなスポーツ界において新鮮な視点を提供しています。
新しい指導者像とアスリートキャリアの未来
國學院大學アルティメット部監督の指導哲学は、従来の勝利至上主義とは一線を画す新しい指導者像を提示しています。競技力向上と人材育成を両立させ、長期的な視点でアスリートの成長を支援するこのアプローチは、現代のスポーツ界が求める理想的な形といえるでしょう。
この対談を通じて、監督自身も「自身の考えを整理でき、同じようなテーマで話す人の意見を聞くことで励まされたり、新たな気づきがあったりして良い経験になった」と述べています。このような指導者同士の情報交換や学び合いの場が、さらに多くのアスリートの成長につながることは間違いありません。
現役アスリート、指導者、そして企業の皆様は、この貴重な指導哲学をより深く学ぶために、ぜひYouTubeチャンネル「アスリートキャリア」の完全版をご覧ください。きっと新たな発見と具体的なアクションのヒントを得られることでしょう。
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