アスリートキャリア

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Netflixが変えるスポーツビジネスの未来。アスリートのキャリアに訪れる新時代

WBCの放映権料が5倍に跳ね上がり、井上尚弥選手のファイトマネーが10倍になった。
これらの劇的な変化の背景にあるのが、Netflixをはじめとする配信プラットフォームの台頭です。地上波テレビが独占していたスポーツ中継の世界は、今まさに大きな転換期を迎えています。

この変化は、アスリートのキャリアにどのような影響を与えるのでしょうか。YouTube「アスキャリ」で公開された小林至氏との対談動画では、スポーツビジネスの最前線で起きている構造変化と、それがアスリートの収入やキャリア選択にもたらす可能性について、具体的なデータとともに語られています。
現役アスリートはもちろん、引退後のキャリアを考える方、アスリート採用を検討する企業にとっても、この変化を理解することは今後の戦略を考える上で欠かせません。本記事では、動画の内容をもとに、メディア環境の変化がアスリートのキャリアにもたらす新しい可能性を詳しく解説していきます。

配信プラットフォームがもたらした収益構造の革命

ボクシングの井上尚弥選手は、地上波で試合が放送されなくなった後、ファイトマネーが10倍になりました。この事実は、メディア環境の変化がアスリートにとって必ずしもマイナスではないことを示しています。

従来の地上波テレビには「到達力」という強みがありました。多くの人が同じ番組を見ることで、国民的なヒーローが生まれやすい環境があったのです。しかし、CM収入だけに頼るビジネスモデルでは、コンテンツに投じられる資金に限界がありました。周辺番組への効果を含めても、せいぜい10億円程度が上限だったのです。

一方、Netflixをはじめとする配信プラットフォームは、全世界をマーケットにしています。Netflixの年間売上は約6兆円に達し、日本のテレビ局1局あたりの平均売上4,000億円と比較すると、その規模の違いは明らかです。この資金力が、スポーツコンテンツへの投資を大きく変えています。

WBCの放映権料を見ると、この変化がより鮮明になります。前回は民放とJスポーツ、Abemaプレミアムを合わせて30億円でしたが、今回は150億円に跳ね上がりました。民放にとっては完全に手が届かない金額となり、「アウトオブリーチ」な状況です。サッカーワールドカップの日本戦も、1試合10億円という放映権料に対し、Abemaが150億円、民放が50億円を出資する形でパッケージを購入しています。

この変化は、コアなファンがペイ・パー・ビューで視聴することを前提とした新しい収益モデルへの移行を意味しています。視聴者数は減っても、熱心なファンから直接収益を得られる仕組みは、アスリートにとってより大きな報酬をもたらす可能性を秘めているのです。

日米の対応に見る、スポーツビジネスの明暗

メディア環境の変化に対し、アメリカのMLBと日本のNPBは対照的な反応を見せています。この違いは、アスリートのキャリア環境にも大きな影響を与えています。

MLBは、かつてアメリカで最も人気のあったプロスポーツでしたが、70年代にアメフトに抜かれ、最近ではNBAにも抜かれて3番目に転落。後ろからはMLSが迫っています。この危機感から、MLBは「2時間半にしなければ野球は死ぬ」という結論のもと、大胆な改革を進めています。

具体的には、ピッチクロックの導入、来季からのロボット審判のチャレンジ制導入、さらにはピッチャーを後ろに下げて打率を向上させる実験まで行われています。これらの改革には、R&D(研究開発)に多額の資金が投じられており、MLBは自らのノウハウを全てNPBにも提供すると表明しています。

以下の表は、日米のプロ野球リーグの対応の違いを整理したものです。

項目 MLB(アメリカ) NPB(日本)
危機感 非常に強い(順位低下への対応) 変化への抵抗が強い
改革姿勢 積極的(ピッチクロック等) 先送り傾向(データ収集優先)
意思決定 スピード重視 12球団一致原則で遅延
外資参入 可能 規制あり
球団数 拡張志向 12球団固定

一方、日本のプロ野球界は「変化をさせないための工夫」に長けていると評されています。
12球団の数を変えず、外資規制を維持し、重要事項は実質的に12球団一致での意思決定を求めています。ピッチクロック導入についても、「まずは7回以降の売上データを1年かけて取ってから検討しよう」といった形で、先送りのためのアイデアが次々と出てくる状況です。

少子化やマーケットの変化により、国内市場だけでは立ち行かなくなる中、将来的には韓国や台湾のチームを入れたエクスパンション(球団拡張)が必要になるでしょう。かつて2005年頃にはアジアシリーズなど、マーケットを広げるための種を蒔いていた時期もありました。しかし現在は、正式な協約を変えるのではなく、「申し合わせ事項」や「運用」で縛るという、日本の政治的な知恵が用いられています。

アスリートが知るべき、メディア環境変化の3つのポイント

この大きな変化の中で、アスリートが押さえておくべきポイントは何でしょうか。

第一に、収益源の多様化です。
地上波の視聴率が下がっても、配信プラットフォームやペイ・パー・ビューによって、コアなファンから直接収益を得られる時代になりました。井上尚弥選手の例が示すように、露出は減っても収入は増えるという逆説的な状況が生まれています。

第二に、グローバル市場へのアクセスです。
Netflixのような全世界をマーケットにするプラットフォームの登場により、日本のIP(知的財産)は世界中で売れるようになりました。『鬼滅の刃』や『キャプテン翼』のように、日本発のコンテンツが世界で評価される時代です。アスリート自身も、国内だけでなく世界市場を意識したブランディングが可能になっています。

第三に、視聴習慣の変化への対応です。
家族でテレビを囲む時代は終わり、好きなコンテンツをスマホやタブレットで見る時代になりました。アメリカでは既に、テレビ以外の媒体の視聴時間がテレビを超えています。2002年W杯のような国民的熱狂は生まれにくくなる一方で、専門的な視点での深い情報発信が求められるようになっています。

以下は、アメリカと日本の収益モデルの違いをまとめた表です。

収益源 アメリカ(ESPN等) 日本(民放)
主な収入 サブスク+広告の二面収入 CM収入のみ(一本足打法)
視聴者負担 あり(何十年も前から) なし(無料放送が基本)
コンテンツ投資 高額投資が可能 天井あり(約10億円)
ビジネス構造 競争環境あり 6局体制で競争少ない

変化の時代に、アスリートが取るべきアクション

メディア環境の変化は、アスリートのキャリア戦略にも大きな影響を与えます。今こそ、この変化を理解し、自分のキャリアに活かす視点が必要です。

動画では、小林至氏が語るスポーツビジネスの構造変化について、さらに詳細な分析が展開されています。日本の放送業界が総務省からの免許事業として運営され、公共性と引き換えに自由な収益追求ができない構造的な問題。そして、その中でアスリートがどのように自分の価値を最大化していくべきか。これらの具体的な戦略については、ぜひYouTube「アスキャリ」の動画本編でご確認ください。変化の波に乗り遅れないために、今すぐアクセスして、スポーツビジネスの最前線を学んでみませんか。

 

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