アイスホッケー強豪チームが実践する「自主性」と「仕組み作り」の両立術

2025.07.27

現代のスポーツ指導において、従来の「上から押し付ける」スタイルから「選手の自主性を重視する」指導への転換が求められています。しかし、多くの指導者が直面するのは「自主性を重視すると選手が怠けてしまうのではないか」という不安です。

中央大学アイスホッケー部の優勝監督が語る指導哲学は、この課題に対する明確な答えを示しています。選手の主体性を最大限に引き出しながら、同時に「怠けさせない仕組み」を構築することで、チーム力向上と個人の成長を両立させる方法論は、アスリートのセカンドキャリアにも大きく関わる重要な要素です。

この章では、現代に求められる指導スタイルの変化と、それがアスリートの将来にどのような影響を与えるのかを詳しく解説していきます。読者の皆さんには、指導者としての視点だけでなく、アスリート自身のキャリア形成に役立つ具体的なヒントを得ていただけるでしょう。

時代が求める指導スタイルの大転換

令和の時代に入り、スポーツ指導の現場では大きな変化が起きています。かつては朝起きてから寝るまで全てのメニューが細かく決められ、選手は管理された環境の中でノルマをクリアすることが求められていました。このスタイルは確かに成果を上げていた時期もありましたが、現在では「何か違う」という認識が広がっています。

現代の選手たちに必要なのは、指示を待つのではなく「自分たちで考えて突破する力」です。特に反則時などの人数が少なくなった状況で行う「スペシャルプレー」を選手自身に考えさせることで、「うまくいったらもっとこうしたい」という意欲を引き出すことができます。

この変化の背景には、社会全体の価値観の変化があります。終身雇用制度が崩れ、個人の主体性や創造性がより重視される現代社会において、アスリートも同様に自分で考え、判断し、行動する能力が求められているのです。

「怠けさせない仕組み作り」の実践方法

自主性を重視する指導では、選手が「怠けようと思ったら怠けられる」環境になりがちです。しかし、ここで重要になるのが指導者側の「仕組み作り」です。毎年スタッフで案を出し合い、トレーニングメニューを検討することで、選手の主体性を損なうことなく、適度な緊張感を維持できます。

効果的な仕組み作りには、以下の要素が含まれます：

– 選手同士が互いを高め合える環境の構築
– 個人の成長が可視化できる評価システム
– チーム全体の方向性を選手と共に決定するプロセス
– 海外挑戦や留学などの新たな挑戦を支援する体制

特に注目すべきは、留学を希望する学生への積極的な支援です。他の大学では戦力ダウンを懸念して留学を敬遠することもありますが、学生が海外で多様な価値観を学び、それをチームに還元することの価値を重視する姿勢は、現代的な人材育成の模範といえるでしょう。

アスリートのセカンドキャリアに活かせる思考力

現代の指導で重視される「考える力」は、アスリートのセカンドキャリアにおいて極めて重要な要素です。競技現役時代に培った主体性や問題解決能力は、企業での活躍にも直結します。

技術や能力よりも「考え方や気持ちがしっかりした選手」を歓迎するという方針は、企業が求める人材像とも一致しています。現代の企業は、指示を待つのではなく自ら課題を発見し、解決策を提案できる人材を求めているからです。

スポーツで培った「チーム全体の意見を組み取りながら方向性を決めていく」経験は、ビジネスの現場でも大きな武器となります。多様な価値観を持つメンバーとの協働や、プロジェクトの推進において、アスリート出身者の強みが発揮されるのです。

グローバル視点で捉えるアスリートの成長戦略

日本のトップ選手でも世界ランキング23位から24位という現状を踏まえると、海外での経験がいかに重要かが分かります。これはアイスホッケーに限らず、多くのスポーツ分野で共通する課題です。

海外挑戦を積極的に支援する環境は、選手の競技力向上だけでなく、将来のキャリア形成にも大きな影響を与えます。異文化での経験は、語学力の向上はもちろん、多様な価値観への理解を深め、グローバルな視点を養うことができます。

現在、中央大学アイスホッケー部からもトップリーグに挑戦する学生や、アメリカのプロリーグで経験を積む学生が出ています。このような事例は、他のアスリートにとっても大きな刺激となり、自身のキャリアプランを考える際の参考になるでしょう。

チーム文化が生み出すアスリートの人間性

「本当に仲のいいチーム」という表現で語られるチームの雰囲気は、現代のスポーツ指導における重要な要素です。かつての厳格な上下関係から、1年生から4年生まで全員が仲良く、統制の取れたチームへの変化は、選手の人間性の成長にも大きく寄与しています。

良好なチーム関係は、選手のメンタルヘルスにも良い影響を与えます。プレッシャーの多いスポーツの世界において、仲間との信頼関係は大きな支えとなり、パフォーマンスの向上にもつながります。

このような環境で育ったアスリートは、協調性やコミュニケーション能力に優れ、企業からも高く評価される人材となります。チームスポーツで培った人間関係構築能力は、どのような職場でも活かすことができる貴重なスキルなのです。

未来を見据えたアスリート育成の新しい形

現代のアスリート育成において重要なのは、競技成績だけでなく、選手の人生全体を見据えた指導です。技術よりも「考え方や気持ちがしっかりした選手」を求める姿勢は、アスリートの長期的な成功を考えた時に非常に合理的な判断といえます。

スポーツコミュニティ株式会社が企画運営するYouTube番組「アスリートキャリア」では、このような現代的な指導哲学や、アスリートのセカンドキャリア支援について、さらに詳しい情報を提供しています。新たなキャリアを模索するアスリートと企業とのマッチングを目的とした同番組では、スポーツ能力がビジネスでも通用することを社会に発信し続けています。

今回ご紹介した指導哲学の詳細や、実際のチーム運営の様子について、より深く知りたい方は、ぜひYouTube「アスリートキャリア」をご覧ください。現役アスリートから指導者まで、スポーツに関わる全ての人にとって価値のある情報が満載です。