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日本一チームが実践する多様性とデータ分析。アルティメット部に学ぶアスリートキャリアの可能性

全国大会2連覇を達成した國學院大學アルティメット部。このチームの強さの秘密は、多様なスポーツバックグラウンドを持つメンバーが集まり、それぞれの強みを活かしながら、徹底したデータ分析とコミュニケーションでチーム力を高めている点にあります。YouTube「アスキャリ」で公開された密着動画では、陸上、野球、バレーボール、サッカーなど、異なる競技経験を持つメンバーがどのように融合し、日本一のチームを作り上げているのかが明らかになりました。

この動画から見えてくるのは、単なるスポーツチームの成功物語ではありません。アスリートが引退後のキャリアで活かせる「分析力」「コミュニケーション能力」「支える力」といった、ビジネスの世界でも高く評価されるスキルの育成プロセスです。本記事では、國學院大學アルティメット部の取り組みを通じて、アスリートのキャリア形成に必要な視点を探っていきます。

多様なバックグラウンドが生み出すチームの強み

國學院大學アルティメット部の最大の特徴は、メンバーの多様性にあります。4年生のキャプテンは中学時代に陸上競技、高校時代は軽音楽部という異色の経歴を持ち、3年生のミドルには野球とバレーボール経験者、バドミントンと新体操から書道部へ転身した選手、そして小学生から高校までサッカー一筋だった選手など、実に様々なスポーツ経験者が集まっています。

チームの強みは「とにかく人数が多いこと」と「雰囲気が良いこと」だと、メンバーは口を揃えます。人数が多いことで、身長が高い人、足が速い人、特定のプレイが得意な人など、様々な能力を持つ選手が集まります。母数が多い分、能力の高い選手が集まり、その人の良いところを活かす戦術や、苦手なところを周りでカバーする戦術が取れるのです。

以下の表は、主要メンバーのスポーツバックグラウンドをまとめたものです。

学年・ポジション 中学時代 高校時代 アルティメットでの強み
4年キャプテン 陸上競技 軽音楽部 リーダーシップと多様な視点
3年ミドル 野球 バレーボール 球技経験による判断力
3年ミドル バドミントン・新体操 書道部 柔軟性と集中力
3年ミドル・ユースキャプテン サッカー サッカー スペース活用と足の速さ

チームが優勢の時はみんなで盛り上げ、劣勢の時もみんなで励まして、自分たちの流れに持っていこうとする姿勢が非常に強いといいます。これは代々受け継がれてきたもので、今も続いている文化です。この「支え合う文化」は、アスリートが引退後のキャリアでチームワークを発揮する際の基盤となります。

代表活動から学ぶ分析力とコミュニケーション力

國學院大學アルティメット部では、代表活動を経験したメンバーがその学びをチームに還元しています。代表活動を通して、他国の分析や他のチームの分析が前情報として非常に役立つことを知り、チームにアナリストを導入するきっかけとなりました。また、試合中のコミュニケーションの重要性、つまり「こうしよう、ああしよう」という連携の大切さを学んだメンバーもいます。

サッカー経験者のメンバーは、自分の強みである足を活かし、スペースを使うスポーツであるアルティメットで、スペース開けの徹底やシュートをもらいに行く動きなど、強さを試合に活かすことが成長した点だと語っています。臆病でコミュニケーションが苦手だったメンバーは、代表活動を通して、コミュニケーション不足を補うために「これをやってみよう、あれをやってみよう」という挑戦する力がついたと感じています。

キャプテンは、メンバーの得意なプレイや特徴を把握しており、それを全体に理解しておいて欲しいと伝えています。例えば、「この人はこのタイミングで投げるから、それに合わせて動こう」という連携が可能になるよう、アップの時から投げ方やスローの特徴を把握することを全体で実施しています。これは、ビジネスにおける「チームメンバーの強みを理解し、最適な役割分担を行う」というマネジメント能力そのものです。

マネージャーが実践する徹底したデータ分析

國學院大學アルティメット部の強さを支えているのが、マネージャーによる徹底したデータ分析です。マネージャーは、練習のビデオ撮影、タイム測定、試合の記録などを行っていますが、特に注目すべきは「シュート」と呼ばれる長いスローの分析です。

分析はExcelで行われ、「誰が」シュートを投げるのか、「どんなパス」でもらったのか、「誰に」投げて、「どんな投げ方」で、「どこからどこに」飛んだのか、そして「成功したか成功しなかったか」を記録しています。この分析は、チームの戦略に活かされるだけでなく、個人が自分の名前でどれだけ成功したかが分かるため、モチベーションにも役立っているとメンバーは感じています。

各学年にマネージャーが配置されており、マネージャーが学年の選手たちとコミュニケーションを取り、情報を収集してチームに共有しています。マネージャーの一人は、「自分から『こうしたい、あれがやりたい』というアイデアが増えてきて、それを実際にやらせてもらえる環境があることがやりがいになっている」と語ります。

以下の表は、マネージャーの主な業務内容をまとめたものです。

業務内容 具体的な取り組み ビジネススキルへの応用
ビデオ撮影・分析 練習や試合の記録、シュート分析 データ分析力、PDCAサイクル
タイム測定 選手のパフォーマンス計測 定量評価、目標管理
情報共有 学年間のコミュニケーション 情報伝達力、調整力
モチベーション管理 個人成績の可視化 人材育成、組織マネジメント

マネージャーは影で支える存在ですが、「一緒に勝ちたい」という気持ちで活動できたことが良かった点だと振り返ります。自分ではない誰かのことを応援することが楽しいと思えたため、社会に出てもそうしたことに力を入れたいと考えているのです。この「支える力」は、アスリートのセカンドキャリアにおいて、マネジメント職やサポート職で大きな強みとなります。

新入生勧誘に見る組織づくりの工夫

國學院大學アルティメット部は、新入生を増やすため、ビラ配りを毎日できる日は積極的に行っています。渋谷キャンパスと多摩プラザキャンパスの両方で実施し、「アルティメットだよ!」と宣言しながら、グラウンドでは1年生が楽しめるように様々な企画をしています。

アップから「ディスク落とし」という、手のひらにディスクを乗せて行う鬼ごっこのようなゲームを取り入れ、シュート練習では、上級生が1年生につきっきりで教え、成功したらみんなで応援して盛り上げることで、1年生を歓迎しています。3対3の練習でも、1年生がゴールを決めたら応援で盛り上げるなど、歓迎ムードを大切にしているのです。

先輩後輩のリスペクトがありつつも、親しみやすさがあるとても良い関係が、このチームの特徴です。マネージャーの一人は、「暇な人がいないで、全員が何かしら選手のためにできることを増やせていけたらいい」と考えており、全員参加型の組織づくりを目指しています。

卒業後を見据えたキャリア形成

チームとしての結果はメダル獲得を目指していますが、個人としての目標も明確です。「田村は止めろ」と言われるような選手になりたいというメンバーや、連覇と優勝を強く意識しているメンバーなど、それぞれが高い目標を持って日々練習に励んでいます。

卒業後は、教員を目指しているメンバーもいます。教員になった際、アルティメットを伝えられる場面があれば伝えていきたいと考えており、教育実習でも実際にアルティメットを伝えてきた経験があるといいます。スポーツを通じて学んだことを、次の世代に伝えていくという姿勢は、アスリートのセカンドキャリアの一つの理想形です。

國學院大學アルティメット部の取り組みは、スポーツ能力がビジネスでも通用することを示す好例であり、この動画では、チームの雰囲気や具体的な練習方法、そしてメンバー一人ひとりの成長ストーリーがさらに詳しく語られています。日本一のチームがどのように作られているのか、その裏側を知りたい方は、ぜひYouTube「アスキャリ」でこの動画をご覧ください。

 

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