アスリートキャリア

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プロ野球OBが語る日米シリーズの裏側。アスリートが知るべき実践感覚とキャリア戦略

日本シリーズとワールドシリーズが同時開催される歴史的なタイミングで、元プロ野球選手とスポーツビジネスの専門家が、両リーグの現状と今後の展望について徹底解説した動画が話題を集めています。YouTube「アスキャリ」で公開された対談では、クライマックスシリーズの意義から、日米の選手の収入格差、そしてアスリートにとって最も重要な「実践感覚」まで、現役時代の経験に基づいた貴重な知見が語られました。

プロ野球の世界で活躍した選手が、引退後にどのような視点でスポーツビジネスを見ているのか。アスリートのキャリア形成において、現役時代に培うべき能力とは何か。本記事では、この対談動画の内容をもとに、アスリートが知っておくべき日米野球の構造的な違いと、それがキャリアにもたらす影響について詳しく解説していきます。

クライマックスシリーズが示す、スポーツビジネスの本質

プロ野球は143試合を戦ってペナント優勝を取りに行くスポーツです。かつては1位同士が日本シリーズを戦って終了していましたが、現在はクライマックスシリーズ(CS)という制度が導入されています。この制度は、単なる「下剋上」を演出するためだけのものではありません。

CS導入の背景には、明確なビジネス上の理由があります。シーズン終盤まで多くのチームに優勝の可能性を残すことで、ファンの関心を維持し、球団が収益を確保するためです。CS導入前は、1位チーム以外、特に5位・6位のチームは夏場以降が消化試合となっていました。甲子園大会が始まると野球記者が甲子園に行ってしまい、6月頃に脱落したチームには記者がいなくなる状況だったのです。

動画に出演した元プロ野球選手は、2011年に所属チームが2位に17ゲーム差をつけてぶっちぎり優勝した後、CSで苦戦した経験を語っています。短期決戦では下位チームが一気にハマって逆転することがあり、CSの難しさを実感したといいます。現行のCS制度は、1位チームにアドバンテージ1勝を与えるなど、「ギリギリ」のバランスを保った制度だと評価されています。

興味深いのは、パ・リーグが先にCSを導入した際、セ・リーグは「こんなチャブ台返しするようなことは日本シリーズでやらない」と猛反対していたという事実です。しかし、パ・リーグが盛り上がるのを見て、セ・リーグも導入する形になりました。この経緯は、スポーツビジネスにおいて、ファンの関心と収益確保がいかに重要かを示しています。

以下の表は、CS導入前後の違いをまとめたものです。

項目 CS導入前 CS導入後
シーズン終盤の関心 1位以外は消化試合化 複数チームに可能性が残る
メディア露出 下位チームは記者不在 全チームが注目を集める
選手のモチベーション 個人タイトル争いに集中 チーム全体で勝利を目指す
球団の収益機会 限定的 シーズン通じて安定

アスリートのキャリアを左右する「実践感覚」という武器

動画では、日本シリーズの予想を通じて、アスリートにとって極めて重要な「実践感覚」という概念が語られています。元プロ野球選手は、ソフトバンクが有利だと予想する根拠として、CSファイナルステージを第6戦まで戦ったことによる「実践感覚の維持」を挙げました。

一方、阪神はCSを4連勝で勝ち上がったため、日本シリーズまで1週間の空白期間が生まれました。この期間中、秋口の体が動きづらくなる時期に実践感覚を合わせるのは非常に難しいといいます。特にバッターは、紅白戦などの練習では実践の感覚は戻せないのです。満員の球場の歓声の中で行われる試合は全くの別物であり、これが「実践感」という言葉で表される違いなのです。

この「実践感覚」は、アスリートが引退後のキャリアを考える上でも重要な示唆を与えてくれます。スポーツで培った「本番で最高のパフォーマンスを発揮する能力」は、ビジネスの世界でも高く評価される能力です。プレッシャーの中で結果を出す経験は、営業や交渉、プレゼンテーションなど、様々なビジネスシーンで活かすことができます。

日米野球の収入格差が示す、アスリートのキャリア選択

動画では、MLBとNPBの収入格差についても詳しく語られています。ワールドシリーズの分配金は、優勝チームで約70億円、一人平均で7000万円にもなります。一方、日本は約300万円という数字が示されました。この圧倒的な差は、アスリートがキャリアをどこで積むかという選択に大きな影響を与えています。

MLBでは、デビューから3年間は基本的に最低金額での契約となり、7年目にFA(フリーエージェント)となる仕組みがあります。マリナーズのカル・ローリー選手は、スイッチヒッターの捕手でありながら60本塁打を達成し、まだ4年目で年俸は4億円程度ですが、28歳という野手のピーク年齢を迎え、今後数年で大型契約をゲットできる可能性が高いとされています。

以下の表は、日米野球の主な違いをまとめたものです。

項目 NPB(日本) MLB(アメリカ)
ワールドシリーズ分配金(一人平均) 約300万円 約7000万円
球団売上(トップクラス) 非公開が多い 約1500億円(ドジャース)
FA取得年数 国内FA:7年、海外FA:9年 7年
DH制度 パ・リーグのみ 全リーグ
放送環境 地上波+BS+配信 地上波+配信

動画では、大谷翔平選手が前年の54本から55本へとジャンプアップしたことについても触れられています。現代野球では、打った選手はデータで徹底的に研究されて丸裸にされるため、2年目のジンクスを越えるのが非常に難しいとされています。しかし大谷選手は「データとかも飛び越えて」さらに研究し努力している選手だと高く評価されました。

日米シリーズ同時開催が野球界にもたらす影響

土曜日からNPBの日本シリーズとMLBのワールドシリーズが同時開催されることで、日本の野球熱や関心は相当上がると予想されています。MLBは朝9時から、NPBは夜からの開催となり、野球ファンにとっては贅沢な一日となります。

日本シリーズが地上波で放送されることは、普段野球を見ない層にも届く「到達力」があり、プロモーションとして非常に重要だとされています。ワールドシリーズもアメリカでは地上波で放送されます。この同時開催は、野球というスポーツ全体の価値を高め、アスリートの社会的地位向上にもつながる可能性があります。

動画では、元プロ野球選手が4勝0敗でドジャースの圧勝を予想しています。その根拠として、スネル、山本由伸、グラスノー、大谷翔平といった強力な先発投手陣に加え、佐々木朗希投手がポストシーズンから抑えに回ったことで「25年の全部が揃った」と感じ、チーム力が完成したと語っています。

一方、スポーツビジネスの専門家は、興行的に盛り上がるためにも接戦を期待し、7戦目までもつれることがMLB機構にとって最も潤うと分析しています。この対談を通じて、スポーツビジネスの裏側と、アスリートが現役時代に培うべき能力、そして引退後のキャリアの可能性について、多角的な視点が提供されています。

YouTube「アスキャリ」では、この続きとして、両シリーズの詳細な展望や、アスリートのキャリア戦略についてさらに深い議論が展開されています。現役アスリートはもちろん、引退後のキャリアを考えている方、アスリート採用を検討している企業の方にとって、貴重な情報が詰まった内容となっていますので、ぜひチャンネルにアクセスしてみてください。

 

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