アスリートインタビュー

現役アスリートや引退後の選手たちへの独自取材を通じて、競技にかける情熱や努力の裏側、これまでの経験やこれからの目標など、表舞台では語られないリアルな声をお届けします。スポーツに関わるすべての人に勇気と気づきを与えるコンテンツです。

【アスリートインタビュー】タッチラグビー・山田 七瀬選手の魅力に迫る!

みなさんこんにちは!女子サッカーの大宮 玲央奈です。今回ご紹介するのは、タッチラグビーに取り組む山田 七瀬選手です!
ラグビーからタックルやスクラム、キックをなくし、鬼ごっこのような「タッチ」で攻防を繰り広げる競技。実は男女混合でプレーできる、他にはあまり見ない魅力を持ったスポーツなんです。そして何より驚いたのが、山田選手が現在妊娠中で、出産を来月に控えながらこのインタビューに応じてくださったこと。さらに10月には実践復帰を見据えてすでに体づくりを続けているという強さに、同じアスリートとして心から尊敬の気持ちを抱いたインタビューになりました。

山田七瀬選手ってどんな人?タッチラグビーの基本ルールも紹介

ーーーでは、山田選手のことを教えてください。

山田七瀬です。タッチラグビーという競技を13歳の時からやっています。年齢は30歳で、子供が1人いて、今ちょうど妊娠中で、もうすぐ出産を控えている状況です。その点も含めて、今日は色々お話しできたらと思っています。

ーーーえ!!!?妊娠中ですか!?予定日はいつなんですか?

予定日が1ヶ月後の8月26日で、もう生まれます。(笑)

ーーーなんと!そんな中お時間をいただき、ありがとうございます。私自身、恥ずかしながらタッチラグビーというスポーツを詳しく知らなくて。どういう競技なのか、教えていただけますか?

タッチラグビーは、ラグビーからタックルとスクラム、キックがないものになっていて、タックルの代わりに鬼ごっこのタッチのような接触のみになっている競技です。そのため男女混合のカテゴリーもあるくらい、男女問わずできるスポーツになっています。

同じ女性として、産後という大きな出来事を控えながらも競技への情熱を語ってくれる山田選手の姿勢に、まずは背筋が伸びる思いでした。ここからは、タッチラグビーという競技そのものの魅力について、さらに深く伺っていきます。

男女ミックスで戦う、他にはない競技性

ーーータッチラグビーを始めたきっかけは何だったんですか?

女子校に通っていて、中高一貫校の部活にタッチラグビー部があって、そこでスタートしました。

ーーータッチラグビー部って、すごく珍しいですよね。

そうですね。部活として中学生からやっているのは、私の母校くらいかもしれません。今も部活は存在しているんですが、他にはあまりないかなという感じです。

ーーー中学生の頃から大会もあったんですか?

ありました。タッチラグビー自体の競技人口が日本では少ないので、社会人も大学生も、私の母校のような中学生・高校生も同じ大会にみんなで出るという形で、それが全日本選手権という大会です。年齢を問わずそこで全国1位を決めるという感じです。体格差はもちろんありますが、そんな中でも十分に戦える競技になっています。

ーーー男女の比率などの決まりはあるんですか?

公式ルールとしては、男女混合チームのミックスカテゴリーの中で、女性が3人はフィールドに入っていなければいけないという決まりがあります(6人中)。ただ中高生の大会では特に決まりがなく、女子だけのチーム対男子だけのチームという試合も普通にありました。

ーーー不思議なスポーツです!男女でミックスして戦える競技って、なかなかないんじゃないでしょうか。とても面白い競技だなと思います。

マイナーだからこそ、他にはない感じかもしれないですね。今もクラブチームに所属していて、そこも男女混合のチームなんですが、男女混合は混合で戦略面も面白くて、それなりに工夫が必要なところが結構面白いと思います。

ーーーミックスの度合いによって戦術も変わってくるんですね。

そうですね。日本代表では女子チームでやっているんですけど、例えばクラブでミックスになると、男子はパスが飛ぶけど、女子は男子ほど飛ばなかったりするので役割がはっきり分担されます。ミックスだと役割分担がよりくっきりする感じがあるかもしれません。

スピード感と駆け引きが生む魅力

ーーー山田選手にとっての、そして見ている人にとってのタッチラグビーの魅力について教えてください。

やっていて魅力的だと思うのは、やっぱりスピード感です。ラグビーもサッカーも、プレーが止まる瞬間があると思うんですが、タッチラグビーは基本的にそれがなくて、タッチされても前に進み続け、ディフェンスは後ろ向きに走りながら守るという、他にはない特徴があります。止まらないスピード感がすごい魅力だと思います。

見ている方が面白いと思うのは、最後の場面だと思います。髪の毛や服に触れてもタッチになるので、実際に触れていたかどうかがお客さんにも分からなかったり、ダイブしてトライを取りに行ったり、手をかわしながら抜けたりするところは見応えがあると思います。

ーーー髪の長い人は不利じゃないですか?(笑)

そうなんですよ!(笑)
ポニーテールとかは結構不利になるので、みんなお団子にしたりしています。
海外とかだとスパッツだったりタイトめなユニフォームを着てますね。

ーーータイトなユニフォームを着てるのも、なびいて触られる確率を下げるためなんですね。ジャッジは審判の目視で、自己申告ではないんですか?

基本的にはスポーツマンシップに委ねられている部分もあるんですが、審判が明らかに触っていないと判断する場合もありますし、基本的には審判が目で見てタッチとトライのどちらが早かったかを判断します。髪の毛など見えない部分も多いので、選手が正直にプレーしているという前提のもとで審判が判断しているという感じですね。

ーーー走り続けるとおっしゃっていましたが、試合時間はどのくらいなんですか?

時間は前半20分、後半20分が公式ルールです。交代は自由なので、アタックを3回やったら交代するような感じで、ベンチに14人入れて、コート内は6人、外にいる選手と入れ替わりながら20分走り続けるという流れです。

ーーー結構ハードですね。コンタクトはないんですよね?

コンタクトはそんなにないんですが、一応正面と正面で向き合うので、海外の選手だと結構ぶつかることもあります。ただタックルで転ぶということはなく、タッチされたらボールを置いてすぐ拾ってという繰り返しで、休む時間があまりないですね。

ーーー老若男女でできると言いつつ、結構タフな競技なんですね。代表選手だと、若い選手と一番年上の選手ではどのくらい年齢が違うんですか?

一番下は今大学生で21、22歳くらいで、一番上は今度の10月の大会に出る予定の選手で40、41歳くらいです。世界で見ても、ワールドカップは女子だけでもウィメンズ35、ウィメンズ40のようにカテゴリーが年齢によって細かく分かれていて、60歳を超える選手もいるくらい年齢幅がとても広いです。

ーーー世界での日本の立ち位置は?

割と成績は良くて、前回のワールドカップで女子は4位でした。最高成績は世界3位です。オーストラリアとニュージーランドが強豪で、ラグビー大国はやっぱりタッチラグビーも強くて、ラグビーと両立している選手が多いので、競技人口の厚みが全く違います。その中で食らいついていけているというところですね。

競技における強み

ーーー山田選手ご自身の、競技における強みはどこになりますか?

基本的に真ん中のポジションをやっているんですが、フィジカルの強さと安定性が自分の強みかなと思っています。

ーーー真ん中の選手は、プレーがぶれてしまうとチームが大変ですもんね。走力なども重要になってくるんですか?

短距離や長距離というよりは、持久力も必要ではあるんですが、短く走って回復する、その回復力の方が大事なスポーツだと思います。

妊娠中も動き続ける、産後復帰への備え

ーーープライベート面も含めて、妊娠前の活動状況を教えていただけますか?

代表選手はみんな各クラブチームに所属していて、クラブチームで毎週末日曜日に練習をしています。月に1回は代表練習が入ってきて、週末に代表合宿をしたり、代表として集まって練習をするという頻度で、平日は基本的に自主トレーニングになります。

ーーー来月出産された後、どのくらいから復帰するかなど、目安は決まっているんですか?

今回は2人目なので、プレスリリースされた10月の試合に間に合わせたいと思っていて、かなりタイトなスケジュールです。1人目の時は産後1ヶ月半で復帰して、大会には3ヶ月ほどで復帰しました。1人目の時はかなり体重も増えていたんですが、なんとか復帰して、8ヶ月後くらいのオーストラリアの試合の時にはもう大体体が戻っていたという経験があります。今回はもう少しタイトなスケジュールなので、体重コントロールとトレーニングを日々続けています。

ーーー妊娠中の体重管理は、どんなことに気をつけているんですか?

栄養は取らなきゃいけないので、食べることはあまり制限していません。食べたいものを、3食以外はそこまで食べないですが、3食はしっかり食べるという感じです。気にしすぎてはいないんですが、それよりも基本的には動くようにしています。

ーーー妊娠中のトレーニング内容もすごく気になります。

今36週なんですが、32週くらいまではランニングができていました。体幹さえあれば意外と走れる感じで、先生にも確認したんですが、息切れするくらいは大丈夫で、心拍が上がりすぎるのは良くないのでペースは落としつつ、一定のペースで走るようにしていました。
4kmから5km弱くらい走っていて、今はウォーキングだけですが、それは続けています。あとは最近妊婦のパーソナルトレーニングにも行ったりしています。

ーーー産後から短い期間で復帰するとなると、妊娠中から気をつけておかないと難しそうですね。

そうですね。体幹がぐらぐらになってしまうというのが1人目の時もあって、復帰した時にすごく体がぶれる感じだったんです。なので今回はそこをすごく意識していて、重いものを持ってトレーニングはしていないですが、体幹だけは鍛えるように意識しています。
1人目の時はそこまでトレーニングをしておらず、しかも冬だったこともあってすごく増量してしまった経験があったので、今回はもう少し気をつけていこうと思っています。

同じ女性として、妊娠中からこれだけ先を見据えて体づくりを続けている山田選手の姿には、本当に頭が下がる思いでした。ここからは、直近の大会と、その先に見据える大きな目標について伺います。

10月の大会、そしてその先の目標

ーーー10月の大会が直近の目標になるんですね。今後の目標として、その先の長期的な目標も伺いたいです。

一応、私が見据えているのは2028年のワールドカップまで代表としてはやりたいということです。オーストラリアもニュージーランドも強豪で、それに対してどれだけ戦えるかを自分たちでも把握できたらと思っていて、2028年にメダルを取ることを目標に置いています。

ーーーその先のことなど考えていることはありますか?仕事をしながら競技を続けていらっしゃいますよね。

基本的にはまだ引退は全然考えていません。下の世代がまだ育ちきっていないというのもありますし、私の中では中堅くらいで、上の世代もまだいらっしゃるので、次のワールドカップの結果次第で、もし続けたいと思うのであればその先も競技を続けていこうと思っています。
今は旦那と一緒にチームをやっているので、2人でチームをもっと盛り上げていけたらいいなと思っています。仕事はプロ化が難しい競技なので、仕事を継続しながらやっていくことになると思います。

ーーー10月の復帰に向けて、今の課題はどんなところにありますか?

10月の大会は初めての形式で、27歳以上の女子だけで出るマスターズ大会というカテゴリーなんです。海外にいる選手も日本に来て代表として一緒に出ることになっていて、私も含めて練習で全員が揃うことが1回もないという状況になってしまうので、短い練習期間の中でどれだけみんなと合わせられるかが今一番の課題です。
個人としては、どれだけ体を戻せるかというところですね。

ーーー今伺った課題感が、まるで妊婦ではないというか(笑)日本代表として戦う上での課題感になっていたので、目指しているところや見ている景色が違うんだなとすごく感じました。代表チームの中にも、産後に復帰されている選手はいらっしゃるんですか?

確かにそうですね(笑)
産後に復帰してる選手はいます。今回のメンバーだと私を含めて3人くらいです。1人は本当に産後1ヶ月半で、2人目を産んで1ヶ月半で競技復帰されている方もいます。

ーーーそれは心強いですね!

その選手の旦那さんも一緒にタッチラグビーをやっているという方で、協力体制がかなりあったというのもあると思います。

家族と共に歩む競技人生

ーーー旦那さんと同じチームで競技をして、一緒に子育てもしてという状況は、どんな心境ですか?

2人とも練習のスケジュールが基本的に一緒なので、2人とも練習の時に子供をどうするかという場面はあります。この間も海外の試合に子供を1人連れて2人で一緒に行って、ベビーボックスに子供を置いて、どちらかが交代の時に見るということをしていました。それは面白くもあり、大変なところでもあるかもしれません。

ーーー同じチームだと、そうなりますよね。でもそれは、お互いのことを分かっているからこそのメリットでもありますね。

そうですね。むしろ協力しないとやっていけないという感じです。

ーーー競技を離れたプライベートの時間で、何か趣味はありますか?

旅行や登山、スノーボードなど、アウトドアが好きです。

アクティブに体を動かすことが好きな山田選手らしい趣味だなと感じました。タッチラグビーで培った体力や体幹の強さも、そういったアウトドアの遊びに活きていそうです。

ーーー最後に、何か伝えておきたいことがあれば!

本当に、産後も競技を続けるというところは諦めないでいたいと思っています。
妊娠・出産を機に競技から離れてしまう女性は多いと思うので、そういうところで自分が色々証明できたらいいなと思っています。

あとがき

山田選手との対談で一番強く感じたのは、産後復帰を見据えて妊娠中もトレーニングを続け、ビジョンを持って努力し続けている姿への尊敬の気持ちでした。ご本人もおっしゃっていたように、妊娠・出産をきっかけに競技から離れてしまう女性アスリートが多い中で、山田選手のような存在がロールモデルになることは、同じ女性アスリートにとって大きな希望になると思います。
「母は強し」という言葉がまさに当てはまる強さを感じました。また、子供がいる中で国際大会に子供を連れて行き、旦那さんと一緒に協力しながら競技に打ち込む姿は、多くのアスリートが目指したくなる関係性だと思います。素敵な人物だからこそ、そんな素敵な環境の中で競技を続けられているのだろうと感じたインタビューでした。
10月の大会での復帰、そしてその先2028年のワールドカップへ。山田七瀬選手のこれからを、ぜひ一緒に応援していきましょう!

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山田 七瀬選手プロフィール

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