
2024年パリオリンピック新種目ブレイキンで日本代表を目指すTOAこと俣野斗亜選手魅力にインタビュー、その魅力に迫る!
こんにちは、バーティカルランナー、階段坊主こと矢島昭輝です。
本日のピックアップアスリートはブレイキンのTOAさんこと俣野斗亜(またのとあ)選手です。
2024年のパリオリンピックにて、新競技として決定したブレイキン。
これからますます注目が浴びる競技であること間違いなしです。
自己紹介、ブレイキンとは?
ーーーはじめまして。よろしくお願い致します。まず自己紹介をお願いします。
はじめまして、ブレイキンをしている俣野斗亜と申します。普段はTOAという名前で主に京都にて活動をしています。現在は2024年のパリオリンピック日本代表に選ばれてメダル獲得すること、Battle of the year というチーム戦の世界大会で優勝することを目標に掲げています。去年行われた日本選手権では準優勝でした。
―――ブレインキンとはブレイクダンスの事でしょうか?
はい、ブレイクダンスとも呼ばれていますが正確には違います。ブレイクダンスの方が馴染みのある言葉になるとは思いますが、元々はブレイキンと呼びます。簡単にいえばブレイクダンスはブレイキンを世に広める時にメディアが分かりやすく作った言葉で、ブレイキンというのが歴史ある言い方になります。そのため私たちはブレイクダンスではなく「ブレイキン」と呼んでいます。ブレイキングをしている人たちの事を「B-BOY」「B-GIRL」といい、Bがブレイキンという意味になります。様々な言い方があってよく混乱されますが、B-BOYやB-GIRL、ブレイキン、ブレイクダンス、どれも同じものを表すと思ってもらえれば大丈夫です。
―――具体的にブレイキンはどういった競技となるのでしょうか。くるくる回っているイメージがあります。
仰る通り、くるくる回るのはブレイキンの特徴の一つです。これは「パワームーブ」というカテゴリーになります。それ以外にも立った状態で行うステップの「トップロック」、床に手をついて足さばきで魅せるフットワークの「フロア」、身体を両手で支えて止める「フリーズ」の4つのカテゴリーが主にあります。私はフロアとパワームーブが得意なので、この二つをこれからも極めていきたいと思います。この「パワームーブ」「トップロック」「フロア」「フリーズ」という4つのカテゴリーを組み合わせて、そこにその人の個性や表現をプラスして制限時間内にパフォーマンスを行い、芸術点を競い合う競技がブレイキンになります。パフォーマンスというのはバトルと呼ばれるものになり、ダンスの世界ではレースや試合という言い方はあまりせず、「バトル」という言い方をします。
―――なるほどバトルですか、格好いいですね。バトルの採点はどのように行うのでしょう。
バトルの採点はジャッジと呼ばれる人によって行われます。バトルの大きさによって違いますが、3人から最大10人のジャッジが評価し、点数が定められる形になります。採点基準はとても難しく、この技が出来たから何点、あれが出来たから加点、というものではなく、心に響かせるようなパフォーマンスをしなければいけません。オリンピックに採用されたことで採点基準が明確に定められつつあるのですが、心に響かせるパフォーマンスというのが採点基準の重要ポイントであることに何も変わりはありません。

redbullBCone japan cipher(1vs1の日本大会)
競技の魅力
―――ブレイキンは心に響かせるパフォーマンスを重要視するとのことでした。何か歴史的背景の影響があるのでしょうか?
はい、ブレイキンは1970年代にアメリカ・ニューヨークのサウスブロンクスで生まれたものになるのですが、元々ギャングの抗争や喧嘩から相手に手を加えることなくダンスだけで決着をつけた事が始まりです。
―――喧嘩、ですか??
そうなんです。当時、ギャングに揉め事があった時に喧嘩ばかりしていてはお互い身が持たないし、怪我人や命の危険があるため、当時のギャングのリーダー同士が平和的解決法としてブレイキンのバトルを生みだしました。びっくりですよね。
そのため相手に自分の気持ちや熱量を如何に伝えるかが重要視されてきました。こういった歴史を「カルチャー」というのですが、このカルチャーを大事にするアーティスト的な立ち位置と様々な表現技法を身につけるためトレーニングを重ねるアスリート的な立ち位置の両方があることがブレイキンの魅力になります。
―――アーティストでありアスリート、格好いいですね。2024のパリオリンピックに採用された事で更にスポーツとしての立ち位置も確立出来たのではないでしょうか。
そうなんです。それまではこの世界大会で優勝したい!自分をダンスを通して自己表現を磨き成長し、周りに還元したい!というような夢や目標が多かったのですが、オリンピック競技という全世界共通なものに向かい、ブレイキンを頑張れるのはとても大きなことだと思います。私自身オリンピックを目指すとは始めた頃は夢にも思いませんでしたが、こうして正式競技になったからこそ更に自分と向き合って頑張れるというところがあります。
―――オリンピックに採用されてTOAさん自身変化はありましたか?
それまでは「カルチャー」としてのブレイキンを重視していたため、スポーツとしてアスリートとして躍るということをしっかり認識しなければと思いました。それまでリカバリーやストレッチ、食事というのはほとんど気にしなかったのですが、こういったこともアスリートとしてダンスに臨む以上、しっかりと学んでいけたらと思いますし、改善していっています。また、競技の特質上怪我も多いので、ケアやメンテナンスもこれまで以上にしっかりしなければと思っています。
―――これまで多くの人とバトルをしてきたと思いますが、どういったことに一番魅力を感じますか?
言葉を交わさずとも相手の事を自然と理解し知れるということです。ブレイキンは身体を使った表現のみでその場を沸かせなければいけません。即興の音楽に即興のダンス、練習をしてきたものをただただ演技する発表会ではありません。相手と自分に繰り返されるターンの中で様々な駆け引きがあり、即興でのパフォーマンスが要求されるのです。相手がこれをしたから自分はこれをしよう、逆に相手がこれをしなかったからこれをしよう、そういったやり取りの中でお互いの事を語り合えることがブレイキンの魅力だと思います。つまり、コミュニケーションと同じですね。

SuperBreak(川崎、日本で行われた5vs5の世界大会)
ストリートダンス=不良、ではない!
―――私はダンスに対して格好いいというイメージしかありませんが、「ブレイクダンスはちょっと怖い人がやってるイメージ」、「真面目なのにダンスしてるの?」という話はちょくちょく耳にしますね。TOAさんは如何お考えですか?
確かにそういう声は多く聞きますね。競技の発祥も喧嘩にあるのでそういった雰囲気もあるのかと思います。しかし、私自身ブレイキンがオリンピックに採用されて周りからの視線も幾分か変わりました。
それこそブレインキンを習い始めた中学生の頃は世間の目は厳しいものがあり、学校に部活もなかったですし、1人でストリートで練習していましたので。
―――今ではダンス部は結構ありますもんね。ということは当時ダンススクールに通っていたんですね?
はい、しかし練習もダンススクールだけでは足りなかったので、夕方から夜中にかけて駅前で練習をする日々でした。周りから見たら柄が悪いなどと思われていたのかもしれません。
ですが、考えてみてください。学校が終わってからダンススクールでみっちり練習をして、その帰り道でも夜中まで練習する中学生や高校生ってかなり好きなものに対してまっすぐでむしろ分かりやすく真面目ですよね(笑)
―――しっかりと練習に打ち込むというのは確かに真面目ですね、そういった認識がこれから広まるといいですね。

Battleoftheyear Final 2019 (フランスで行われたチーム戦の世界大会)
技を見せるのではなく、生き様を魅せつける
―――「心に響くダンス」というのはとても難しいものだと思います。
その人のバックボーンが見えるパフォーマンスが心に響くものだと思います。先ほど説明したようにダンスバトルは練習してきたものを披露する発表会ではなく、即興の音楽に即興のダンス、そして交代で行われるお互いのパフォーマンスにどう対応していくかということが問われます。
―――全てが即興なんですね、難しそうです。
お互いがパフォーマンスを繰り返す中、相手の技に被せて技を披露したり、アウェイという立場にありつつも上手く観客を沸かせられたり、喜怒哀楽の感情をダンスで前面に表していく事、それがとても難しいところです。これが出来るパフォーマーは周りにその人自身のバックボーンを感じさせる事が出来るのかと思います。反対に、ただ基本に沿ってパフォーマンスをしたり、ただ大技を繰り返そうとするだけの人は底が見えるといいますか、感情に響くパフォーマンスは中々難しいものがあるかと思います。
それだけ自分と向き合って自分を理解する必要があるなと感じます。もちろん大技の難易度もしっかり評価されるべきですし、バランスですね。
―――ただ大技を披露するだけでは、単に「よく練習したんだね。」で終わってしまい、それ以上でもそれ以下でもないんですね。自分のバックボーンを感じさせるダンス、私も是非この目で見たいとこです。

JDSF Breaking Japan 2021
B-BOY、B-GIRLを憧れの存在に
―――TOAさんは現在京都で活動されているとの事ですが、将来の理想像というのはあるのでしょうか。
今はダンススクールにて講師をさせて頂いていますが、スクールの子どもたちだけではなく多くの子どもたちにブレイキンをやりたいと思ってもらえるようなブレイキンの価値を確立させたいです。そして、ブレイキンは格好いいという印象も確立させて子どもたちに夢をみてほしいです。現状ダンスを始めるほとんどの子がHIPHOPにいきますが、それは好きか嫌いかというより認知度の違いだと思うんです。オリンピックに採用されたからにはこれからブレイキン人口が増えていく事に期待はできるので、自分が率先してこのブレイキン業界を引っ張っていくつもりで取り組んでいきたいと考えております。京都市は日本でトップクラスのブレイキンチームがありますので、私自身京都の亀岡市という地元から京都市に出てきましたが、それまでの練習環境やレベルの違いに驚きが隠せませんでした。是非京都近郊でブレイキンに興味がある方は京都市でお越しください。
TOA選手の魅力
―――パリオリンピックに採用されて更に盛り上がりをみせるブレイキン。TOA選手のインスタグラムを覗くと「こんな動き、人が出来るの?」と思うこと間違いなしです。TOA選手の屈託ない笑顔と物腰の柔らかさがバトル中にどう変化し、喜怒哀楽を表現し、観客を沸かすのかがとても楽しみです。 インタビュー時にも溢れ出ていた熱い情熱だけではなく、人を引き付ける温かい魅力も感じました。
実はTOA選手が中学生の時に同じダンススクールで顔合わせをしていた階段坊主、すごい上手い子がいるなとは思っていましたが、まさかあの時の少年がこんなにも立派になっているなんて…いやー、世界は狭しです。
(ちなみ階段坊主は一か月で挫折したので触れるのはNGです。)
近々ではソロのバトルが9月と12月、チームのバトルが8月と12月にあるとのことなので、今後のTOA選手活躍に大いに期待です!
TOA選手を応援しよう!
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