• アスリートインタビュー
  • 様々な競技や活動で活躍するアスリートたちの貴重なストーリーをお届けする特集です。それぞれのアスリートが歩んできた道のり、日々のトレーニング、試合や大会でのエピソード、成功や挫折の経験を通じて、スポーツへの情熱や挑戦の魅力を深く掘り下げていきます。また、競技外でのライフスタイルや目指す未来についても触れることで、アスリートの人間的な一面にも迫ります。スポーツを愛する全ての方々にとって、刺激と学びに満ちた内容をお届けします。

【アスリートインタビュー】モータースポーツ/ラリー・稲葉 摩人選手の魅力に迫る!

みなさんこんにちは!女子サッカーの大宮 玲央奈です。
今回のピックアップアスリートインタビューは、モータースポーツ/ラリーの稲葉 摩人選手です!

自己紹介

ーーー女子サッカーの大宮玲央奈です!まずは稲葉さんの自己紹介をお願いします。

はじめまして、稲葉摩人です。
現在、早稲田大学のスポーツ科学部に在籍をしています。
競技は車のレースをずっとやっていて、今年はラリーという競技をしています。今までやっていたサーキットを走るレースではなくて、一般公道や山道を閉鎖して車で走る競技をやっています。
よろしくお願いします。

ーーー早稲田のスポ科なんですね!私も同じです!(笑)

そうだったんですか!
地元の静岡と行き来しながら、今も自然豊かな(笑)所沢キャンパスの近くに住んでいます!

ーーー改めて、本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします!

ラリーとは

ーーーラリーという種目についてもう少し詳しくお聞きしたいです。

モータースポーツにはいくつか種類があって、”レース”と”ラリー”は違います。これまでやっていたのは小村さん(Find-FC登録アスリート)がやっていらっしゃるような”レース”で、複数台で、サーキットという専用の場所で走る、そんな競技です。
今僕が取り組んでいる”ラリー”は、1台ずつで、公道や山道で走る、そんな競技です。ただ、公道を暴走する違法行為ではありません!

ーーー陸上競技で言うところの、街を走るマラソンか、競技場を走るトラックかという感じですね。

そうですね。あとはラリーとレースの大きな違いとしては、ラリーは舗装路に限らず、雪とか砂利とか、様々な路面の上を走る特徴があります。あとは、前述の通り一般公道を使います。競技車両だけが走る区間も存在しているのですが、普通に車や自転車が往来している、買い物帰りの方とか、子どもたちが歩いてる道路とかと同じところを、ちゃんと法定通りに走らなくてはいけない移動区間(リエゾン区間)があるんです。
逆に、完全に閉鎖されて競技車両しか入れない、タイムを測る区間は、SS区間と呼ばれています。
このSS区間のタイムの合計が1番早い人がラリーの勝者です。

砂利の上の写真

ーーー一般道もレースに使われるんですね!

そうです、リエゾン区間では沢山の住民の方が手を振ってくれますよ!
これが2日、3日にわたって行われるのがラリーです。

リエゾンで手を振ってくれてる人達の写真

小さいころから車が大好きだった

ーーーそもそも車で走る競技を始めることになったきっかけはなんだったのでしょうか?

物心ついた時から車が大好きだったので車のことばっかり考えるような幼少期で、当時9歳とか10歳くらいでやりたいと言い始めましたね。

ーーー9歳で車に乗りたいという気持ちが芽生えるのは早いですね!

中には3~4才から乗り始めてる選手もいますが、競技界の中でも早いと思います。
そうなった時にじゃあ何から始めるかっていうのを父が調べてくれて 、近くのゴーカートができる、カート場に行きました。
そしたらたまたまカートに乗ってる同級生の子がサーキットにいて、そういう子がいるんだということにすごい感化されて、僕もやりたいと思いました。

ーーー実際に見に行ったことが大きなきっかけになったんですね。

いや、もう本当親不孝だなと思いながら。(笑)

ーーーえー!なんでですか!

やっぱりお金もかかりますし、走る場所が少ないので岐阜行ったり鈴鹿行ったり、毎週末どこかに連れて行ってもらうのが普通でしたね。
遠くに来たのに両親は観光する暇もなく…という感じでした。

ーーー競技を始めるうえでご両親は応援するよというスタンスでしたか?

私の家庭はいわゆる財閥のような家庭でもなければ大金持ちの家庭でもなかったので、食卓で、これぐらいお金がかかっているんだぞ!という説明は、思い返せば毎晩毎晩ありました。
それでも、お前のやりたいことなら、とやらせてもらっていましたね。

ーーーご両親のサポートに感謝ですね。

両親や親族のサポートがなければ、昔も今もないので感謝しかありません。
将来きちんと返さないとと思っています。

競技転向のきっかけ

ーーーラリーに転向したのはいつと仰っていましたっけ?

ラリーに転向したのは本当に去年、一昨年の話です。
サーキットのレースを10年ぐらいやった後に、ラリーに転向しました。

ーーーきっかけは何だったんですか?

2021年までサーキットのレースをずっとやっていて、その年に初優勝があって。で、その次の年2022年にもレースをやってたんですけど、実は同時にコ・ドライバーとしてラリーにも出場していたんですね。

ーーーコ・ドライバー?

ラリーって運転するドライバーだけではなく、 コ・ドライバーという助手席に乗る人も必要で、同じコースを走るレースと違って長い山道を走らないといけないので、地形を全部を覚えるというのができないんですね。なので運転手の隣でコースの形状だったりこの先こうなってるよとか、この先危ないですよって言ってくれる人が必要なんです。
それで当時このフォーミュラのレースをやってた時にスポンサーになってくださっていた企業の社長様が車好きで、ラリーやりたいってラリーの車を作ったんです。

ーーーパワフルですね!(笑)

それでよし、ラリー出るかって出ようとしたらコ・ドライバーがいないってなって。
コ・ドライバーはライセンスを持ってる人じゃないとなれないので、日本だとラリーのライセンスとレースのライセンスは別れてないので、ライセンス持ってるだろ、コ・ドラやってくれよって云われて(笑)
そんな流れでたまたま自分のレースをやりながら、ラリーのコ・ドライバーも始めてっていうのがきっかけでした。

ーーーひょんなことから始まったんですね!

大会後、来年も一緒にでようかっていう話をしたのが2023年でした。
で、この時に会場に行ったら、奴田原(ぬたはら)さんというレジェンドドライバーの人がいて、僕がコ・ドライバーとして行ってたラリーにいたんです。

ーーー奴田原さん、全日本ラリー選手権で10度の総合チャンピオンを獲得したり、海外ラリーでも成功されてる方なんですね。

そんな方が僕のことをレースやってる子だって知ってくれていて、レースやっててハンドルも握ってるのにコ・ドライバーとして隣で、次右ですとか次左ですってもったいなくないかという話をしてくださって。
2023年くらいに、奴田原さんが主宰するNUTAHARA RALLY SCHOOLにドライバーとして受校したところ、縁あって全日本ラリーに出ることになったという経緯です。

ーーー今ではラリー1本ですもんね。やっぱりレースとラリーは全然違うものなんですか?

全然違いますね。そもそも走る車も道も違います。
さっき出てきたコ・ドライバーの話になるんですけど、そのコ・ドライバーが読んでいる”右だよ、左だよ”みたいな案内の文章って、実はコ・ドライバーが作っている訳ではなくて、コース下見の時にドライバーが作っているんです。
例えば今のとこ右4って書いといてとか、今のとこ左6って書いといてっていう、あくまでその案内の文章を作るのはドライバーの仕事なんですよね。
サーキットのレースってただ走って覚えるだけなので何の苦労もないんですけど、ラリーのドライバーをやるとなったら、いわゆるペースノートっていう案内の文章を作らなきゃいけない。ただ右カーブじゃなくて、どんな右カーブなのかっていうのを言語化するスキルみたいなのがすごい重要になってくるんです。
しかもそれを聞きながら走らないといけないっていう、そこの引き出しみたいなのはレースやってた時は全くなかったので、すごい難しい競技だなと思います。

ーーー一般道を走るとき、SSと呼ばれるスピードを出せるコースを走るときってどのくらいの速さになるんでしょうか?

本当に細い、車1台が通れるくらいの山道だと平均60km/hぐらいに落ち着くのですが、最高速度の出るところだと170km/hぐらい出ますかね。
設定されたコースによりますが、最高速100km/h以上出ることはしばしばです。
先日の愛知のラリーでは最高168km/h出ました。

ーーースピードの緩急というか、そういうのも結構大変そうですね。

そうなんです、だからサーキットみたいに何周も走って、こうしよう、ああしようってしながら100%を常にずっと出し切れるのとは違って、ラリーだと例えば90%で走って、水溜りだったり、岩であったり、何があってもいいように常に何が起きるかわからない事態に10%を残しておくのがラリーっていう感じです。そこがすごく難しいなって思います。
レースとラリー違いすぎて最初はわけわからなかったですよ(笑)

競技の魅力と稲葉選手の魅力

ーーー今ではラリーという競技の魅力に取りつかれてしまった稲葉選手ですが、この競技の一番の魅力は何だと思いますか?

一番はやっぱりやってて楽しいですね、同じ道じゃないので。本当に楽しいです。
あとは走る側としても見る側としても、普段は何の変哲もない道がいきなり競技区間、というかそのスポーツで使う道になるっていうのも魅力のひとつじゃないかなと思っています。

ーーーお次は稲葉さんの魅力についてお聞きします!競技面の強みを教えてください。

競技面の強みは、まず車の運転は普通の大学生よりも多分上手じゃないかなって思っています。

ーーー普通の大学生というのは、競技者ではなくて一般大学生のことを言ってますか?(笑)

はい(笑)

ーーーそれは強みって言わないでください!!(笑)

あと何ですかね。他のドライバーよりもブレーキは突っ込むタイプで、物怖じしないことですかね。ラリーではそれが原因でクラッシュしたことも去年はあったんですけどね。
監督にはスピードセンスって言われてるんですけど、この車だったらこのスピードまで出していい、ブレーキしたらこういう動きになるっていう想像力は豊かな方かなと思っています。

ーーークラッシュしたら大事故になってしまうだろうし、とても大事な要素ですよね。

その時は大事故でしたね。
修理に200万ぐらいかかりました。

ーーーええ!車も心配ではありますが、稲葉選手は怪我とか大丈夫だったんですか?

首が痛かったです。
状況としては長い直線の後に右カーブだったんですけど、僕がノートと作った時に書いた注意情報とかを全部聞き逃していまっていて、行けるやろと思って行ったら全然曲がれなくて。
そのまま崖下にドンっていきましたね。痛かったです。

ーーー痛かったで済んでよかったですよね。

本当そうです。コ・ドラの人も生きててよかったってなって。
本当生死に関わっちゃうくらいの事故になる可能性もありますし、突っ込みどころが悪かったら危なかった事故だなって思います。

ーーーその後にちょっとレース怖いなみたいな気持ちにはならなかったですか?

思いましたよ。本当その後は山を走れなかったですし。
体の損傷はなかったですけど、精神的にも経済的にもダメージを負ったので、その後もひたすら車を直しながら、山道に慣れるために夜山に行ってゆっくり走ってみたりっていうリハビリみたいなことをして次の試合に臨みましたね。

ーーー気持ち的に落ち着くまでどのくらいかかりましたか?

次の試合がクラッシュした日から3週間後っていうのが分かってたので、その3週間のうちに車も修理しないといけないし、恐怖心も克服しないといけないっていう状況だったので頑張りましたね。

現在の活動状況

ーーー現在は早稲田大学に通いながら競技を続けていると思うんですけど、部活とかではなくて、個人で活動しているんですよね?

そうです、実は去年2024年の1年間は大学を休学していました。
というのも全日本ラリーが年に8回開催されていて、僕は部活じゃないので授業を公休にできるかどうかは教授によって分かれるんですね。
ただ僕のゼミが年に8回授業があって、競技とかぶってしまっていたのでゼミの単位が取れない状況でした。そうなると卒論も1年遅れてしまうので、だったら開き直って休学しちゃった方がコスパいいよなと思ったのが1つ目の理由です。
もう1つはやっぱり競技にお金がかかるので、自分で働きながら競技をやろうかなと思って休学しました。

ーーーそうしたら、休学中の1年間はがっつり働きながら競技をされていたんですね。

僕の所属しているチームが持ってる別の会社の事業の営業を担当してました。営業の時はこんなに話せなかったんですけどね(笑)

ーーー営業経験は絶対に今後に活きると思います!今練習は週にどのくらいやってるんですか?

練習にも種類があって、サッカーやられてる方がジムでもトレーニングするのと同じで、僕もジムのトレーニングとか、フィットネストレーニングに関しては週2回以上、できる時は週3回っていうの決めています。
あとはサッカーで言うフィールドの練習の時、僕らで言う車のハンドルを握ってる時間でいうと、バーチャル空間でシミュレーションができるんですけどシミュレーターを使ったトレーニングはチームに設備があるので週に1回~3回行っています。
バーチャルではなくてリアルでハンドル握るトレーニングは、これも分かれているんですけど、全開走行といってサーキットとか行ったりして車の力を100%引き出す時間っていうのは月1回やったらレア。月に1、2回走れたらすごい良い方です。あとはペースノートっていう、コースの下見の練習をしています。

ーーーペースノートはイメージの言語化という部分ですね。

右4と書くべきなのか5と書くべきなのかを本番悩んじゃいられないので。
ペースノートを作る練習っていうのは時速40キロとかでもできる練習なので、時間を見つけてはすぐ山に行ってこれいくつかな、左2かなみたいな、そういうことを考えながらドライブしてます。

ーーー練習方法というか、磨くべきスキルが沢山求められる競技なんですね。

本当にその通りで、ラリーはただ走るだけじゃないので、走りの技術も、それ以外、例えばペースノートを作る技術も、まだまだ足りないなと思っています。
それこそ海外のトップのラリー選手が何してるかっていうのを聞いたら、SSの景色を何となく覚えてないと本当に危ないところでスピード落とせなくなっちゃうからっていうので、記憶力を上げるためのトレーニングしていたりとか。記憶とか右脳の鍛え方みたいなものもやってたりもするみたいなので、そこも追々やっていかないとなと思っています。

ーーー私もオーストラリアで5年ぐらいサッカーやってたんですけど、その中で動体視力というか目のトレーニングとかもあったりして、ちゃんと目で見てるボールの位置と脳から指令を出して体を動かすまでのボールの位置の捉え方を一致させないと、ほんの少しのズレが起きてシュートを外してしまったりすると言われたことがあります。そういう視覚情報ってきっとラリーでも絶対大事ですもんね。

本当に大事ですね。今も視界の限界まで指広げてっていうような眼球のトレーニングはやってたりします。

今後の大会情報と目標

ーーー今後の大会情報を教えてください

4月13日(日)に九州の佐賀県唐津市で行われる全日本選手権に出場します。全日本ラリー選手権の第2戦になります。

ーーー今後の目標としては?

今年の目標でいうと全日本選手権で、表彰台圏内で全てレースを終えたいです。
欲を言えばチャンピオン獲得して、来年はヨーロッパに行けたらいいなと思っています。

ーーーヨーロッパの環境が世界的に見ても良いのでしょうか?

そうですね、去年も選考に残ってフィンランドまで行きました。
フィンランドで1週間すし詰めみたいな合宿があって、それも日本から100人のうち6人に選ばれてフィンランドに行って、最終の2人に残ったらフィンランドで育成としてトレーニングが積めます。
もう1回その育成のチャンスを掴みに行きたいなと思っています。

ーーー環境も全然違いそうですもんね。

おっしゃる通りで、まさに12月のフィンランドは雪と氷の世界なので、環境が全然違いました。
その氷点下の環境で、雪と氷の上で、車を運転してみなさいよという、ラリーに求められるドライビングのセンスがあるかないかを試されましたね。
道の形状もヨーロッパと日本は全然違くて、広かったりジャンプしたり、200キロぐらい出るような道も多いので、 そういう道で走れるドライバーにならないとなと思います。

ーーー世界で戦えるドライバーですね!

なります!!

ーーーこの目標達成に向けた現在の課題はなんでしょうか?

まずは自分のドライビングスキルをもっとラリードライバーとして上げていくことです。
もう1つはもっと多くの人に応援してもらえるように、それは人としてもそうですし、競技としてももっと色んな人に知ってもらえる、応援してもらえる競技にしていく立役者みたいな、そういうランドマークにならないとなっていうのは課題だと思っています。

ーーーまずは日本でしっかり結果を出して、ヨーロッパや海外でも活躍できるドライバーにとしてラリーを盛り上げるという目標を応援してます!本日はありがとうございました!

ありがとうございました!

あとがき

休みの日でも暇さえあれば車に乗って、自身の競技車両をチームの拠点にさわりにいったり、小さいころから今もずっと車が好きという純粋な気持ちで溢れていました。また競技レベルだけではなく、自分の見ている世界が基準ではなく、全く知らない人に説明するときの順序立ての仕方であったり、人としてという部分でもとても魅力のあるアスリートだと感じました。
競技柄費用もかかり、収入のほとんど全部が競技に消えて生活に余剰はでないという現状も変えるために、自ら営業活動も行っているそうです。
スポンサードや応援などそれぞれのサポートの仕方で、稲葉 摩人選手をみんなで応援しましょう!

モータースポーツ/ラリー・稲葉 摩人選手を一緒に応援しよう!

モータースポーツ/ラリー・稲葉 摩人選手を応援・支援してくださるスポンサー様、サポーター、ファンの皆様を募集しております。
詳しくはアスリートとスポンサーを繋ぐFind-FCをご覧ください。

稲葉 摩人選手プロフィール

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