こんにちは。
現在、日本代表入りを目標に活動しておりますフィンスイミング選手の世古千紘です。
今回は、プロで活躍されている車いすテニスの荒井大輔選手にインタビューしました!
選手紹介
荒井 大輔(あらい だいすけ)選手
東京都出身。1988年生まれの32歳。
BNPパリバに所属し、プロの車いすテニス選手として活躍している。
世界ランキング18位 (2021.02現在)。
車いすテニスとは?
車いすテニスは、2バウンドまで可能ということ以外は一般のテニスと同様のルールで行われる。
また、国際ツアーも一般同様に行われ、同大会内にて開催されることもある。そのため、金額は少ないですが、賞金も発生する。
クラス分けは男子、女子に加え、上肢にも障害のあるクアードクラスを加えた3カテゴリーとなる。他のパラスポーツと比べるとクラス分けが少ないため、人数も多く競争率が激しいものとなっている。
車いすテニスとの出会い
ーーー車いすテニスを始められたきっかけは何だったのでしょうか?
2014年に岐阜の福祉機器メーカー企業へ就職となりました。
その職場での営業先の方に車いすテニスの選手がいらっしゃって、誘っていただいたことがきっかけでした。
元々、中学、高専と義足でソフトテニス部に所属していたこともあり、テニスをする環境を探していたので、やってみようと思いました。
ーーー実際車いすテニスを体験されて、本格的に向き合い始めたのはいつ頃でしょう?
正直最初は、自分は義足をつけて立ってテニスができるし、わざわざ車いすに乗らなくてもいいと思っていました。
その思いから車いすテニスを体験してからは月1回程度でしか練習に参加していませんでした。
しかし、同年10月に義足をつけていた右脚に怪我をしてしまい、その後怪我をした右脚をかばったからか左足の半月板も損傷してしまい、手術をしたりしてしばらく歩くことが困難な状況になってしまいました。
それを機に、本格的に車いすテニスをしていこうと思いました。
時期でいうと、2015年の2月か3月くらいだったと思います。
ーーーデビュー戦はいつ頃ですか?
デビュー戦は車いすテニスを始めてからは日が浅く、4月に国内のローカル大会に出場しました。
そのときは1回戦しか勝つことができず、悔しかったことを覚えています。
ーーー実際、義足でのテニスと車いすテニスでは難しさなどの違いはありましたか?
立ってテニスをできていたので、車いすになって一番苦戦したのは、自分が思った場所にすぐに行けないことです。
咄嗟に動けないもどかしさというか…
テニス経験があったということもあり、ボールまで辿り着くことさえできれば打ち返せる自信はあるのですが、その場所にラケットを持って車いすをコントロールして行くことが難しいなと感じます。
ーーーそれも踏まえて、荒井選手が考える車いすテニスの『する側』の魅力と『見る側』の魅力を教えていただけますか?
まず『する側』の魅力としては、試合中の駆け引きはもちろんなのですが、個人的には旅行が好きということもあり、遠征が多く世界各国で戦えることも魅力です。
世界各国で、いろんな国の選手と、さまざまな環境に適応しながら戦えることは何より楽しく、魅力的だなと思います。
また、一般のテニスにはないチェアワークは難しいですが、追求し続けられる点でもあるので、車いすテニスならではの魅力だと感じています。
『見る側』の魅力としては、ルールはほぼテニスと同様なので、テニスを知っている方には親しみやすいのではないかと思います。
違いはやはりチェアワークと2バウンドまで可能という点なので、ラケットを持ちながら車いすをコントロールしてコートを駆け回る姿は初めて見る方も楽しめる部分かと思います!
特にダブルスはシングルスよりもラリーが続いて魅せられる部分が多いので、初めて観る方にはより楽しんでいただけるのではないかと思います!
トレーニング状況
ーーー普段はどちらでトレーニングをされているのでしょうか?
トレーニングは基本、千葉県の柏市にあるTTC吉田記念テニス研修センターを拠点に行なっております。
ここは車いすテニス界では男子トップ選手が集まる聖地のような場所になっていて、2018年から利用しています。
その他、ナショナルトレーニングセンターやブリヂストンスポーツでも週に1〜2回トレーニングをしています。
ーーーコロナでスポーツ界もかなり影響を受けていますが、トレーニング等は行えていますか?
はい。
ありがたいことにトレーニング環境は施設の協力もあり、確保できています。
また、先ほどもお伝えしたように世界ランキング1位の国枝選手などのトップ選手と一緒にトレーニングができているため、トレーニングとしては車いすテニス界では世界トップレベルの環境で実施できていると思います。
大会情報
ーーー大会としては今後の見通しは立っていますか?
国際ツアーがメインのため、海外遠征が厳しい状況となり、現状は世界ランキングが凍結しています。
そのため、昨年のポイントがキープされたままとなっています。ですが、3月からヨーロッパで開催の見込みです。
しかし、今の状況を踏まえると参加してもいいものなのかという葛藤もあり、まだ決めかねているところです。
現在の課題と自身の強み
ーーー現在、荒井選手が課題と感じられていることはありますか?
対戦相手によって、自分のパフォーマンスがブレる部分が大きいので、安定させたいです。
またフィジカル面でよりしなやかで柔軟性のある身体作りにも力を入れています。
ーーーでは逆に、『ここだけは負けない!』というご自身の強みがあれば教えてください。
フィジカルの強さと、オーストラリアにワーキングホリデーで住んで身についた海外での生活力です。
また、元々ソフトテニスをやっていたので、バックハンドが得意ショットです。
今後の目標
ーーー今後の目標を教えてください。
選手としては次のステップとして、世界ランキングトップ10に入ることです!
また、私自身生まれつきの障害者ですが、障害者としてしか育ってこなかった自分だからこそ、伝えられることがあると思っています。
あまり希望が持てず、内向的だった私ですが、中学時代にテニスに出会って、コートの上では誰もが一人の人として接してくれたことで自信が持てるようになり、人とのコミュニケーショを取ることや外に出ることも増えていきました。
この経験から、障害や自分自身にコンプレックスを感じてしまっている方々に、何か一歩踏み出せるきっかけを与えられるように一人のアスリートとして、プレーで魅せ、伝えていくことが目標です。
また、それは日本に留まらず、東南アジアなど海外へもアプローチしていきたいと考えております。
まとめ
アスリートとしての実績も素晴らしいのですが、さまざまな経験をされてきた荒井選手だからこそ伝えられることがたくさんあるのだとお話を伺って強く感じました。
また、その伝えたいという想いの強さは人一倍強いと一つ一つの言葉から感じることができ、プレー以外の活動でも海外で力を発揮してくれると思います。
今のコロナ禍で、どのスポーツにおいても不安は拭いきれない部分はありますが、目標に向かって頑張ってほしいと思います!
荒井大輔選手を応援したい方はこちらから!